「もっと姿勢を真っ直ぐに」。先生にそう言われるたびに、ぐっと胸を張って背中をのばそうとする。でも踊り始めると数秒で崩れてしまう。
頑張っているのにどうして直らないんだろう、と思ったことはありませんか。実は、「姿勢を作ろうとする」という考え方そのものに、崩れやすくなる理由が隠れています。
「真っ直ぐに」と言われてもできないのは、なぜ?

「姿勢を整えてください」と言われると、多くの方が胸を張り、肩を後ろに引き、背中に力を入れます。見た目には真っ直ぐに見えることもあります。でも踊り出すと、その姿勢は数秒で崩れてしまいます。
なぜかというと、その姿勢が「力で固めた状態」だからです。固めた状態は、動いた瞬間に維持するための力がさらに必要になります。踊りながら腕を動かし、足を運び、相手と合わせようとすると、固めていた力はすぐに別のところへ逃げてしまいます。
胸を張ることが悪いわけではありません。ただ、力で胸を張るのと、自然に胸が開いているのは、体の感覚として全然違います。力で作った姿勢は、力を抜いた瞬間に消えます。自然に整った姿勢は、余計な力を使わなくても続きます。
「意識すれば作れるのに、踊るとなくなる」という感覚は、力で固めているサインです。
姿勢、上から直そうとしてたけど、問題は下だった
骨盤が安定すると、上半身がすっと伸びてくる
上体の姿勢は、上半身だけで作るものではありません。背骨がすっと伸びるためには、骨盤が安定していることが必要です。骨盤が安定するためには、お尻や脚のつけ根の位置が整っていることが関係しています。
土台から順番に整っていくイメージです。家で言えば、柱がしっかりしていれば壁は自然に真っ直ぐになります。逆に、柱がぐらぐらしているのに壁だけ真っ直ぐにしようとしても、すぐに歪んでしまいます。
体も同じで、お尻や骨盤の位置が安定していると、背骨はすっと立ちやすくなります。その上に胸や肩が乗るので、上体が崩れにくくなります。多くの方が「上を直そう」としているのですが、実は下の土台が先に整っていることが必要です。
社交ダンスで姿勢が崩れやすい方は、踊る前の「ただ立っている状態」からすでに土台がふわっとしていることが多いです。立ち方そのものを見直すと、上体の安定が変わってくることがあります。
一生懸命ひじと背中を保とうとしているのに、なぜか崩れる
ホールドを組んだとき、ひじの高さや背中の形を力で保とうとする方が多いです。腕に力を入れて、背中に力を入れて、肩を引いて……。これだけのことを同時にやりながら踊るのは、かなり大変です。
力で保とうとすると、呼吸がぎゅっと浅くなります。呼吸が浅くなると、全身がさらに固まります。体が固まると、足の動きが重くなります。重くなった足で踊ろうとすると、上体を保つための力がさらに乱れます。一か所を力で固めようとすると、体全体が動きにくくなっていきます。
ひじや背中が崩れるのは、そこが「弱い」からではなく、土台が先に整っていないために上半身が力でカバーしようとしているからです。
世界大会に出た経験のある先生も、「姿勢を力で作ろうとしていた頃は、踊るたびにどこかが崩れていた。整えてから踊ると、ひじも背中も意識しなくてよくなった」と話していました。
ホールドの安定についてはこちらの記事でも詳しく取り上げています。→ ホールドが崩れる理由を知りたい方へ
家で試したら、力が抜けてくる感覚がわかった
「力を抜いて」と言われても、どこをどう抜けばいいのかわからない、という方は多いです。力を抜くこと自体が難しいように感じるかもしれませんが、実は体の位置を整えると、力みが自然に減ってくることがあります。
一つ試してみてください。椅子から立ち上がるとき、前かがみになって勢いをつけて立つのと、お尻を少しだけ後ろに引いてから静かに立つのとでは、立ち上がった後の体の感覚が違います。後者のほうが、すっと立てた感じがしませんか。
これは、立ち上がる瞬間にお尻と骨盤の位置が整うからです。立ち上がった後に両足でしっかり床を踏んでいる感覚があれば、背骨はそのまますっと伸びやすい状態になっています。
「力を抜く」ことを目標にするより、「立ち方を整える」ことを先にやってみると、結果として力みが減ってくる、という体験をした方がいます。ダンスの練習前に、この「静かに立つ」感覚を確かめてみるだけでも、踊りはじめたときの体の感じが少し変わることがあります。
脱力の感覚をもう少し詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。→ 力を抜く感覚のつかみ方
姿勢が整ってきたとき、踊り方が変わった気がした
姿勢を力で作っている状態で踊り続けると、体が疲れやすくなります。腕や肩、背中の筋肉が常に緊張しているので、レッスンが終わる頃にはどっと疲れている、という方も少なくありません。
土台から整えた姿勢は、余計な力みが少ないので疲れにくくなります。健康面でも、力んで体を固め続ける踊り方より、自然に整った状態で体を動かすほうが、長く続けられる体の使い方につながります。
社交ダンスは長く楽しめるスポーツです。何十年も続けている方がたくさんいるのは、体を酷使せずに踊れる側面があるからでもあります。力で作る姿勢から整えて安定させる姿勢へ変わると、踊っている間が楽になった、という声があります。
初心者のうちから土台を意識しておくと、後から体の使い方を修正する必要が減ります。初心者向けの体の土台については、こちらの記事も参考にしてみてください。→ 初心者が最初に整えたい体の土台
ターンで体が流れてしまうことが気になる方は、こちらも合わせてどうぞ。→ ターンで体が流れる理由
よくある質問
Q:社交ダンスの基本姿勢はどんなものですか?
一般的に、足は肩幅くらいに開いて立ち、背骨がすっと伸び、胸が自然に開いた状態が基本とされています。頭は前に出ず、耳と肩が縦に並ぶくらいの位置が目安です。
形を覚えるより先に、土台(骨盤・お尻の位置)が整ってから上体が乗っているかどうかを確かめてみるほうが、安定した姿勢につながります。力みが抜けた状態でその形が自然に出てくるかどうかを見ていくのが、遠回りのようで近道です。
Q:社交ダンスを踊っていると姿勢が良くなりますか?
踊ることで体を動かす習慣ができることは確かです。ただ、踊れば自動的に姿勢が整うわけではなく、体の使い方がポイントになります。
力んで踊り続けると、体のクセが固まってしまうこともあります。一方で、土台から整えた立ち方で踊れるようになってきた方の中には、日常の姿勢が楽になったと感じるケースもあります。踊っている体と、普段の体はつながっています。
体の使い方を実際に試せる体験会があります。よければ一度のぞいてみてください。


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